【エキノコックスのおはなし】
エキノコックス症は、キタキツネやイヌが多包条虫と呼ばれる寄生虫に感染し、糞便と一緒に排出された虫卵が、
何らかの拍子に人の体内に侵入し、重い肝機能障害を起こす病気です。
潜伏期間は5~15年で、発症すると病巣を完全に切除する以外に有効な治療法はありません…
日本では北海道だけに存在すると考えられてきましたが、2005年には埼玉県で捕獲されたイヌの糞便から、
また、2014年4月には愛知県知多半島で捕獲されたイヌからエキノコッカスの虫卵が確認されています。
病原体
多包条虫(Echinococcus multilocularis)
テニア科エキノコックス属に分類される条虫で、本来イヌ科の動物を終宿主としています。
中間宿主となる人の体内で嚢胞をつくり、次々に全身の臓器に転移します。
病原体を媒介する動物
[キツネ・イヌ]
イヌ科の動物から次世代の感染源となる虫卵が排泄されます。野生動物では各種のキツネ、ペットではイヌが問題になっています。
症状
感染して5〜10年は無症状期で自覚症状がありません。その後、嚢胞が大きくなるにつれ、肝臓内の胆管・血管が塞がれ、肝機能障害が進みます。嚢胞が胸腹壁や周囲の臓器を圧迫し、疼痛や違和感などの症状が現れはじめます。末期には重度の肝機能不全となり、黄疸や腹水、浮腫などが現れるとともに、発育中の嚢胞の一部が崩壊し、多包虫が血流に乗って肺や脳、骨髄など、さまざまな臓器に転移します。
放置すると90%以上が死亡します。
経口感染
感染したキツネやイヌは糞便の中に多量の虫卵を排泄します。これが本来の中間宿主である野ネズミに食べられると、主に肝臓で幼虫が増殖します。人が誤って虫卵を飲みこむと肝臓などに幼虫が寄生します。
流行地での居住、旅行に際してキツネ、イヌなどとの接触や、虫卵に汚染した可能性のある水、山菜などの摂取を避ける事である。また、流行地においては、飼いイヌの検便を確実に行い陽性の場合は、獣医師の立会いの下にプラジカンテルによる駆虫を実施することが重要である。
※出典:厚生労働省(2004)「犬のエキノコックス症対策ガイドライン2004 - 人のエキノコックス症予防のために - (p.34)」
イヌはほとんどの場合、不顕性感染。感染した野ネズミを食べることで感染する。感染したイヌは、やはり糞便中に多量の虫卵を排泄する。
中間宿主、ネズミから人への感染はありません。